2024年03月24日

四十九日

数年前のことです。


出張中の夫から「ここ数日、何だか理由もなく
寂しい気がするんだけど一体何だろうね」との
電話があり"一体"と言うキーワードを探る為
夫と前世療法に取り組んだことがありました。


その時に出てきた夫の前世は古代エジプト。

身内も友人も居ない自由気ままな流浪人の男が
ある日一頭のラクダと出会い、その日から何を
するにも常に一緒で片時も離れる事はなかった
という内容でしたが…


印象的だったのが、流浪人の死の体験の場面で
「一緒に星空を眺めてはもう寝たかなー?って
お互いに顔をのぞき込みながらずーっと微笑み
合っている」と言う夫の言葉で、私にまでその
光景が浮かんで視えたことでした。


結局
その時に登場した相棒のラクダが"一体"の
正体だったのですが、

夫が言うには
その大切な相棒だったラクダも今世に転生して
いて、それが飼い猫の「こゆき」だったのです。





四十九日


出張当日。
夫の頬をペチペチしながら「ありがとう、バイバイまたね。」
のつもりだったのか「出張に行っちゃうの?」だったのか、
ただ抱っこがイヤだったのか…




2月4日(日)の12時。
夫は出張の為、抱いて語りかけていたこゆきを
優しくソファーにそっと降ろし家から出ました。


1月13日に海外出張から帰国したばかりの夫は
通勤で毎朝5時の起床にもかかわらず、今回の
出張迄の間、こゆきともみじの2匹と寝ながら
こゆきの介護をしてくれていました。


私は退院した猫のミーミーちゃんと別室で寝て
いたのですが、夜中何度か目が覚める度に夫の
声が聞こえてくる浴室まで行ってみると、

雨が降らず水不足だというのにシャワーの流水
を眺めるのが大好きなこゆきの為に夜中何度も
浴室へ連れて行っていました。



そんな夫が発つ2日前の金曜日。
こゆきの後足は動かなくなり、少量の朝ご飯が
最後になりました。


それでも
スフィンクス座りで目力はあり、いつの間にか
浴室入口で横たわっているこゆきを何度か目の
当たりにした私は(造血剤を打てばまた歩ける
ようになるのでは…)と思い、こゆきを病院へ
急ぎ連れて行き、こゆきの心臓には負担の点滴
まで追加し、備えで痙攣止め薬を受け取り帰宅
しました。


けれど
家に入りキャリーの中のこゆきを寝床に降ろし
脱いだ靴を片付けようと玄関に戻ると不思議な
ことにお香の香りが漂っていました。


けれど
家ではお香や芳香剤など使わない為、この時に
漸く悟った私は取り返しのつかないミスをした
ことをひどく後悔しました。


その日、仕事から帰宅した夫にその事を話すと
案の定「気のせいだよ」の一言だけでこゆきを
抱いて浴室へ行ってしまったのですが、翌日は
リビングでその香りが漂っていました。


(逝く時は夫がいる間に逝って欲しい。)

私は複雑な思いでそう願っていました。


けれど
こゆきにしてみれば
時を待っていたのかも知れません。



夫が発つ前日の土曜日。
私は休日だった夫に猫達を任せて
近くのスーパーへ買い出しに出かけました。


買い物を終え車に戻る際、通りすがりの子供の
「見て見て!綺麗な虹!」と叫ぶ声に釣られて
空を見上げると、とても大きな色鮮やかな虹が
現れていました。

(こゆきを迎えに来たのかな…
それとも他の子が渡っているのかな…)

そう思いながら、次の日も、その次の日も
虹は見えていました。



夫の出張当日の日曜日。
その日もこゆきに異変は見られませんでした。

夫は安堵しながらも、出かける直前迄こゆきと
一緒に過ごしていました。


夫が出かけた後、
寝室を見回しながら私は
(こゆき達と寝るのは何ヶ月ぶりだろう…)
そんな事を考えながらこゆきの寝床を整えて
いました。


去年、こゆきは退院してからというもの
双子のもみじと揃ってリビングソファーで寝る
ようになり、2匹の体調も安定したことで私が
別室に居るFIVキャリア猫のミーミーちゃんと
寝るようになって4ヶ月以上もの月日が経って
いました。



その日の夜、
開腹手術を経て元気回復したミーミーちゃんに
ご飯を与え少し遊んで早々に部屋から出ました。


リビングソファーで待ち侘びていた2匹を見て
安堵した私は急ぎ入浴を済ませ、もみじにご飯
を与え点滴をし、次にこゆきを抱き少量の水を
口に含ませた後2匹と寝室に移動し、ベッドに
置いていたペット用ホットカーペットに2匹を
降ろして床に着きました。



深夜0時。
夫が家を出て12時間が経過した時でした。

保護当初からいくつかの持病を持ちながら
風邪だけは引いた事がなかったこゆきが初めて
2度くしゃみをしました。


私はこゆきの体温がまだ37℃台だった為、
免疫力もない時に病院へ連れて行ったせいだと
思い、布団の中でこゆきに寄りそい、そのまま
眠りに落ちていきました。


その後どのくらいの時間が経っていたのかは
わかりません。


ふと気づくと、こゆきはしゃっくりをしながら
上体だけで何度も起き上がろうとしていました。


にもかかわらず、愚かな私はぼんやりした頭で
(痙攣はしていないし、初めてのしゃっくりで
びっくりしているんだろうな…)と、こゆきの
体を摩りながら再び眠ってしまったのです。


結局、知識も経験もなかった私はこゆきの異変
を見逃し最期の看取りすら出来ませんでした。


けれど
その時に何故か想像していた悲しみは訪れず
胸が詰まりながらも涙は出ませんでした。


我に返った時
こゆきは壁方向を見つめ、口元に少量の泡を
付けたまま手足の硬直も始まっていて、慌てて
手足を整え口元を拭き、口を閉じようとすると
ちょうど口から異臭が抜けていく最中でした。


数分後、
こゆきの口から異臭が抜け切ったのを確認し、
口を閉じて時計を見ると3時半。


夫にメールでこゆきの死を知らせ、あらかじめ
決めていた霊園に電話し、その日15時の予約を
取り終えたタイミングで夫からの着信音が鳴り
少し話をして電話を切りました。


その間にすっかり剥製のようになってしまった
こゆきを抱いたまま、もみじと別室のミーミー
ちゃんにも知らせなければと、こゆきの遺体を
2匹に近づけてはみたものの、死というものが
理解できない2匹はまるでそこにはこゆきが居
ないかのように無反応でした。


(そうだよね。
ここにこゆきは居ないんだよね。)

そう言って膝の上で冷たくなったこゆきの遺体
を暫く眺めていましたが、それでも涙が出なか
ったのは、おそらく私は予想外の顛末に呆気に
取られていたのだと思います。


けれど
こゆきには
その時がベストなタイミングだったのでしょう。


(そっか、
お父さんに辛い思いをさせたくなかったんだね。

待たせてごめんね、
お母さんともしばらく寝ていなかったもんね。

ごめんね、
いっぱい嫌な思いや痛い思いさせて来るしい時
に抱いてあげられなくて。

ごめんね、
頑張ってくれていたのに言葉もかけてあげられ
なくて。)


そう言いながら居るはずもないこゆきの気配を
探していました。


その後
眠れるはずもなく、こゆきが使っていた寝具を
洗濯し、部屋中の掃除をしました。



その日の朝は
小雨が降り出し再び気温が下がっていました。

お気に入りだったバスケットで寝ているこゆき
に(少しの間まっててね。)そう言って2匹に
ご飯を与え用事を済まし、こゆきをキャリーに
移し替えて車に乗せ、霊園に向かいました。


15時前に霊園に到着すると
小雨で寒い中、駐車場で傘をさしたスタッフが
待っていました。


私は待合室へ案内され、キャリーに入ったまま
のこゆきを預け、暫くしてスタッフに呼ばれて
別室へ行くと、花とこゆきの写真が飾られた
祭壇の中央に、棺の中で布団に入ったこゆきが
いました。


こゆきの周りを花で埋め、迷信をよそにもみじ
とのツーショットの写真を添え祭壇の前で手を
合わせた後、スタッフから、この後の予約は入
っていないからと火葬炉に送られる迄の1時間
近くをこゆきと過ごしました。




四十九日




それでも最期の別れの時間は
あっという間でした。


それまで泣いていなかった私が
スイッチが入ったように泣いたのは
こゆきが火葬炉に送られる時でした。




四十九日




火葬の間、館内納骨堂を一通り見て外に出ると
雨も止み東の空に大きな虹が現れていましたが
骨上げ後、遺灰の入った骨壷を車に乗せる頃に
なると再び小雨が降り出し、小雨は初七日まで
降り続いていました。




四十九日

2月5日、17年と6ヶ月で天国へ旅立ちました。




あれから早いもので、もう3月も残すところ
あと一週間。

そして今日はこゆきの四十九日。


実はこの記事、
こゆきの初七日から1週間ごとに書き留めて
いたので時系列で日記風になっていますが、
これは私が双子の腎不全末期のもみじと肝細胞
癌の悪性で全摘出できなかったミーミーちゃん
の為に反省を踏まえ最期のことを忘れないよう
書いたものです。


私はこの7週間で、病院で勧められて2匹に与え
続けていたエビデンスのないサプリや薬を一切
止めました。


また獣医には伝えていませんが、
もみじに毎日するよう言われていた皮下輸液も
1日〜2日おきに量を減らしながら入れ、


食いしん坊のミーミーには、肝癌に効果のない
抗癌剤治療はせず、大好物なものを好きなだけ
与えていますが、


それでも2匹とも変わらず元気で、2週間ごとの
血液検査にレントゲンやエコーでの異常も見当
たらないようなので、今後、シニアな愛猫2匹
に必要な対処療法はしても、ストレスと臓器に
負担をかける無闇な検査や延命治療はしないと
決めることもできました。


そのことを
獣医からではなく、こゆきから教わりました。


また
こゆきは他にも教えてくれたことがあって
教えてくれたというより視せてくれました。


7週間で3度だけでしたが、

1度目は亡くなった日の夜、もみじと寝室で
寝ようと目を閉じると、真上から物凄い光が
降りて来て不思議と朝まで眠れたことと、


2度目は初七日で、こゆきの遺影に手を合わせて
いると、天国で色んな動物がいる中をこゆきが
馬やラクダや犬になったりしながら悠々と気持
ち良さそうに歩いているのが視え、


3度目は四七日で、セッションが終わった後に
暫くボーっとしていると、寝室の窓からもみじ
が外を眺めていて、そこにゆきが現れて2匹で
仲良く外の景色を眺めているのが視えました。



そこには苦しみながら死んで逝ったと思われる
こゆきではなく、生前元気だった姿のこゆきで
こゆきは自由自在に姿を変えながらどこにでも
行けて楽しんでいるようでした。


今もこれからもこゆきには感謝しかありません。



ありがとう、大好きなこゆき。
もみじとミーミーのこと任せてね。
また来世でね。



2024,3月24日(日)



Posted by ヒーリング&カウンセリングRoom アルケミー at 21:00